会員寄稿(1)
洛友会会報 217号


一本の送電線

岩噌弘三(昭28年卒)

 最近、ペルーのマチユピッチユ遺跡の観光基地クスコ(海抜約3400メートル)から、海抜3890メートルのチチカカ湖まで、観光バスで走った。羊、アルパカ、牛などが放牧されている広大な草原が長時間続くが、バスに沿って1本の裸電線が延々と続いた。電柱のトップにある碍子も少し大きく電力線用のものに思われた。
 一体なにに使用されているのかと、その線を追い続けた結果、県境警備事務所のような所で終わっていた。ある程度予想していた通り、最終の電柱のところで地面から立ち上がってきた線と共に柱上変圧器らしきもので終端していた。バスは停止せずに通過したために、残念ながら写真に収めることができなかった。
 卒業後、弱電のみに従事してきたので、間違っているかもしれないが、両端で数オームの接地が可能で、消費電流も多くなければ、高圧で送電し受電端に自動電圧調節器を設置する方式が、数10kmに渡って、2本の送電線を引くよりは経済的かとも考えた。
 昨年、開通後2ヶ月の、中国西寧からチベットのラサまでの列車に乗車した。標高4000メートル以上の区間が960kmに及ぶ荒涼たる土地で、トラブルが発生すればどうするのだろうと考えていると、乗客が携帯電話を取り出したのに驚いた。車窓の左側にかなり高圧の送電線が走り、規則的に無線中継局が設置されていた。右側には、駅ごとに、車両運行連絡用の衛星地上局が太陽電池と共に設置されていて対照的であった。




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