電気系教室懇話会報告
洛友会会報 207号

 

電気系教室懇話会報告

 平成16年度の電気系懇話会は10月22日(金)に、約120名の参加のもとに開催されました。
 第一部の講演会は、3人の講演者をお招きし、午後3時より電気総合館中講義室において行われました。講演会の進行は、鈴木実教授(電子工学専攻長)が務められました。
 講演会の最初に、島崎眞昭電気電子工学科長からご挨拶がありました。京都大学は4月より国立大学法人となり、規制が緩和されるとともに厳しい競争にも直面しています。現在、電気電子工学科および大学院工学研究科電気系2専攻はそれぞれ自己点検を行っており、近々外部評価を受ける予定です。現状を率直に見直し、将来の大学評価に備える重要なステップと位置づけ、学生、卒業生、教職員へのアンケートや、各種データの整理を行っています。新しい国立大学には従来にも増して社会との連携交流、学生諸君への実社会に関する適切な情報提供が求められており、電気系教室懇話会がこの面で大きく貢献してくれることを期待していると述べられました。
 最初のご講演は、田丸啓吉先生(昭33年卒、名誉教授)による「LSIと40年ーLSIの消費電力問題の変遷ー」でした。1960年代のICが、70年代にLSI、80年代にVLSIとなり、現在では素子数が10の8〜9乗個に達しています。素子数の増加により90年代後半から消費電力が問題になっていますが、その対策をご自身の経験を交えて紹介されました。先生は1970年代に東芝でPULCEという16ビットのマイクロプロセッサを開発されました。高速化のために、サファイア上にSiのNMOSを世界で最初に作られました。消費電力が5Wであったので、トランジスタのしきい値を下げることを、これも世界で初めてされたそうです。また、フィンをつけることで放熱効果を高められました。最近のCMOSでは、消費電力が電源電圧の2乗および周波数に比例するため、電源電圧が5Vから0.8Vまで下がっています。しかし、電源電圧が下がると遅延時間が長くなりスピードがおちる。これにはしきい値を下げるのが有効であるが、こんどはリーク電流が増えるという問題がおきる。そこで、スピードに応じて電源電圧やしきい値、そして周波数を変える技術が開発されているそうです。また、ゲートリークを下げるために、新しい絶縁膜も開発されています。今後はプロセッサの並列化やCMOSに代わる新しい素子の開発が必要であり、学生諸君への期待を述べて講演をしめくくられました。
 2番目のご講演は、衣川清重氏(昭44年卒、(株)日立ディスプレイズ技師長)より「ディスプレイ技術及びディスプレイ産業の現状」と題してお話いただきました。まず、日立ディスプレイズの紹介をされた後、フラットパネルディスプレイ(FPD)技術の概要と市場規模を説明されました。ディスプレイデバイスには液晶(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などがあるが、それぞれ技術が異なるためデバイスの選択がきわめて重要であるとのことです。用途には、携帯電話、パソコン、TV、カメラ、プロジェクタなどがあり、現在の市場規模は5兆円に達しているそうです。主流となっているa-Si TFT液晶は普及とともに価格が急速に下がり、従来のCRTモニタを駆逐しつつあります。また、マザーガラスの大型化が進み、投資額も巨大化しています。生産量では韓国、台湾が日本を上回り、研究開発でも両者の台頭がめだちます。産官学の共同による国際競争力強化が必要であると話されました。次のフロンティアは大型フラットパネルTV用とユビキタス端末用のディスプレイであるが、前者についてはPDPおよび韓国、台湾との競争が予想され、後者については新しいアプリケーションの創出が必要だそうです。日立では独自の技術としてIPS(in plane switching)液晶やインパルス駆動により広視角性および動画の視認性にすぐれた大型パネルを開発し、2006年から松下、東芝との合弁会社で量産を開始するそうです。また、携帯用として低温p-Si液晶にプロセッサを組み込んだパネルや、有機ELによる全固体かつ自発光のパネルも開発されているそうです。現在、華やかにみえる情報家電機器の背後でこのようなご苦労があることを知ることができました。
 最後のご講演は、谷口治人氏(昭48年卒、(財)電力中央研究所システム技術研究所長)による「わが国の電力自由化と系統技術」でした。まず、現在進行している電力の自由化について説明されました。1995年に卸売りが自由化され、2005年には卸電力取引所が開設されます。小売りも、2000年に2000kw以上、2003年に500kw以上の需要家について自由化され、2005年からは50kw以上の需要家が自由化されるそうです。つぎにこのような電力自由化における系統技術面からの課題として、自由化による不確実性の拡大に対処することが重要であると話されました。供給の信頼性を上げようとすると供給コストが増え、下げると停電が起きることによる停電コストが増える。両者を合計した社会コストが最小になる信頼度レベルが望ましいが、しかし想定した需要がすこしずれると信頼度が大幅に低下するということが起きる。したがって、不確実な要因に対してロバストなシステムを作る必要があると話されました。また昨年の北米大停電について紹介され、大規模な停電が起きないような系統構成や運用方法、人間と自動システムの協調、系統および機器保護などについて検討が必要であると述べられました。最後に、太陽光や風力発電など分散形電源はクリーンかつ無尽蔵であるが出力が不安定であることから、赤城試験センターで行っている需要地系統に関する研究を紹介されました。分散形電源を組み込んだ新しい電力システムの制御やエネルギー効率およびコスト改善など総合的な研究が実施されています。会場からは、北米大停電における補償問題について質問がありました。
 以上で第一部の講演会が終わりましたが、いずれのご講演も興味深い内容でした。鈴木教授が講演者の方々へ謝辞を述べられ、聴講者の拍手でもって閉会となりました。
 第二部の懇親会は午後6時より、会場を吉田(旧教養部)生協食堂に移して行われました。懇親会の進行は大澤靖治教授(電気工学専攻長)が務められました。まず工学研究科長・工学部長の荒木光彦教授からご挨拶がありました。続いて、参加された名誉教授の中で最年長の小川徹名誉教授のご発声で乾杯を行い、講師の方々、卒業生の方々、大学教職員、学生等の参加のもと和やかに懇談がもたれました。日頃接することのできない方々と気軽にお話しできるよい機会でした。料理を囲みながら和気あいあいとした雰囲気で会話がはずみました。途中、名誉教授の木村磐根先生のスピーチがありました。電気系教室の洛友会について紹介されるとともに、母校の学生諸君と話す機会が得られたことを喜んでおられました。懇親会は午後7時半にお開きになりましたが、最後まで料理、飲み物ともに豊富にあり、楽しいひとときを過ごすことができました。
 最後になりましたが、ご講演を快くお引き受けいただいた講師の方々をはじめ、遠くからご参加いただきました卒業生の皆様、ご参加くださった教職員、学生の皆様に厚く御礼申し上げます。また、この会をサポートしていただきました洛友会ならびに関係会社の皆様方に深く御礼申し上げます。

   垣本 直人(昭50年卒)記                        

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