そうだ引っ越ししよう!
洛友会会報 208号


そうだ引っ越ししよう!

櫻井浩二(平3年卒) 

 引っ越しというのは、大変ですが、楽しいものでもあります。
 私は、今年に入ってから転勤に伴い引っ越しをしました。夫婦2人だけでそれほど荷物はないのですが、世帯全体の引っ越しですので、大変といえば大変です。ここでは、引っ越しの際に感じたことを書きたいと思います。 まずは、荷物の整理です。普段の掃除では、目に付くところだけしか片付けませんが、引っ越しとなると、家中のすべての物に一度は目を通し、片付けなければなりません。押し入れの中に入れっぱなしの段ボール箱などは、特に曲者です。アルバムや本、おみやげの雑貨、UFOキャッチャーの戦利品など、いろんなものが出てきます。ここまで言えば、あとはどうなったかはご想像のとおりです。捨てようにも捨てられない思い出の品々。それらをついじっくり見て回想にふけるうちに時間はどんどん過ぎていきます。それで結局は何も捨てることなく、また同じ段ボールに詰め直すだけになってしまいます。でも、なんだかそれが楽しいのです。引っ越しの準備は全く進まないのですが、妙な充実感があります。
 また大変なのが、衣料品です。妻のほうが、当たり前のことですが、私よりもずっと衣装持ちです。押し入れの衣装ケースから、いつ買ったのか、いつ頃着ていたのか知らない洋服が山ほど出てきます。特に痛んでいるところもなく、着ようと思えば着られるものばかり。問題は、やはりデザインです。流行が変わったから恥ずかしくて着られない、あるいは自分の好みが変わったから着たいと思わないのどちらかのようです。
 服に無頓着な私でも、同様に感じたことが一つあります。それはネクタイです。捨てられずにしまってあった黒系や赤系のものがぞろぞろと出てきます。今はと言えば、青系や黄系の物ばかりを好んで使っていることに気がつきます。4、5年前はあれほど格好いいと思い、好きだった色が、今では何も興味も無くなっています。こんなに好みが変わるものなのかと、我が事ながら不思議なものです。
 人の考え方や性格には一貫性があって、そんなに変わることがない、特に自分自身はそうだと思いがちですが、実際は、自分が気づかないだけで、生活環境、仕事等あるいは単に年月の経過によって、意外にも大きく変化しているものなのかもしれません。
 さて、もう一つ感じたのは、ゴミです。引っ越しでは粗大ゴミが多く出ます。私の住んでいた街は、粗大ゴミに関して寛容で、たとえば自転車は、不要品と書いた紙を貼り付けて、粗大ゴミの日に出すだけで、費用負担もなく捨てられます。捨てるのは簡単なのですが、何となく後ろめたさを感じずにはいられません。
 私の折り畳み自転車は、致命的な不具合は無く、整備すれば乗られるものだったのですが、簡単に粗大ゴミに出せるというルールに甘えて、捨ててしまいました。あるプレゼントで戴いたものの、ほとんど乗る機会がなく、埃をかぶっていたからです。
 世の中に物が溢れている現在、一世帯が所有する物品の種類を数えたら、百単位では足らず、千単位になると聞いたことがあります。捨てられるゴミだから捨てるというのは、確かに合法ですが、環境には悪影響を与えてしまいます。ルールを守るのは当然の事ですが、無駄使いしない、使わないものは最初から買ったり貰ったりしない、ゴミをなるべく出さないといったような、私たち消費者の行動こそが大切なのだ、と反省させられます。
 次に、古い書類の山にも困ります。なかなか捨てられないものです。引っ越しだけでなく、普段の仕事などでもそうでしょう。「あれば便利」は、裏を返せば「無くても大丈夫」ということだから、どんどん捨てられるのではないか、と頭では理解できるものの、いざそうしようと思ってもできないものです。
 「あれば便利」という感覚は、現代人にとっては自然なものです。世の中のすべての物やサービスは「あれば便利」をベースに発展してきたといっても過言ではないでしょう。しかし、個人消費のレベルで「あれば便利」だから「とりあえず手に入れておく」という行動は、反省すべきなのでしょう。私の折り畳み自転車がまさにそれです。
 以上が、引っ越しの際に多くの必要な物や不要な物に囲まれながら、感じたことです。
 かなり昔のCMに「そうだ引っ越ししよう!」というフレーズがありました。そんな思いつきの引っ越しは非現実的ですが、やってみると意外と面白いのかもしれません。
 引っ越しは、今までの暮らしを振り返るいいきっかけになり、自分の生き様や自分を取り囲む社会を見つめ直すヒントを与えてくれます。そして、違う土地で暮らし始めれば、自分の視野や行動範囲が変わり、生活に必ず変化が起こるはずです。未知の何かに出会えるチャンスも増えるでしょう。ひょっとしたら風水学的な良い効果も期待できるかもしれません。
 季節は春です。「そうだ引っ越ししよう!」とまではいかないまでも、部屋の模様替えくらいはしてみてはいかがでしょうか。

 

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