会員寄稿(3)  
洛友会会報 210号


登山の楽しみ

長谷川 慎治(平成6年卒)

  登山は気軽に楽しめるスポーツだと思う。京都に住んでいたころは、登山をするには体力的にも知識的にも不十分なので、自分にはできないことだと思っていた。しかし、就職して北陸にきたときに、山が身近にあると感じた。地理的に近いだけでなく、気軽に登山している人が多いと感じた。だから、自分も登山のガイドブック片手に登ってみることにした。
  最初の登山として白山に登った。学生時代の友達と二人で、ガイドブックの情報をもとに服装・靴・バッグなど必要と思われるものをそろえて、モデルコースどおりに歩くことにした。10月初旬の紅葉が始まるころで、天気にも恵まれた。正午前に出発して自分達なりのゆっくりとしたペースで歩いていき、周りの木々の色が緑から赤や黄色に変わってきたころには、景色も遠くまで見渡せるようになっていた。確かに疲れも感じていたが、気分がいいので足は軽やかに動いていた。
  山小屋に宿泊し、翌朝まだ暗いうちから歩き始めて山頂に到着しご来光を待った。風が強くて寒い中でじっと待っていると、雲海の奥に北アルプスの山々が島のように見え、その奥が徐々に赤から黄色へと変わっていき、太陽が昇る瞬間に金色に輝いた。この間は時間も風も止まっているように感じたし、また空気が澄んでいるためなのか遠いはずの山が近くに見えて幻想的な世界だった。その後は山頂の峰々を巡ってから下山し、ふもとの温泉に入って疲れを癒した。
  この体験で登山の魅力にはまって毎年紅葉時期には登山をすることにして、翌年は西穂高岳に登り、その翌年は白馬岳に登った。白馬岳では、1日目の登りの間ずっと霧のために景色が見えなくて疲れを感じていたときに、目の前に雷鳥が現れて、私が近づくと前へ進み、私が立ち止まると雷鳥も立ち止まって、私と常に一定の距離を保って警戒しながらも、なおかつこちらにも興味も持っているようだった。それが丁度私を山頂へ誘っているかのようで、しばらくは疲れを忘れて夢中で歩くことができた。一方、二日目は快晴になり、北アルプスや南アルプスの山々更には能登半島までを眺めながら歩くことができた。
  4年目からは、より遠くの山を登るようになり、4年目には八ヶ岳連邦の赤岳に、その翌年には中央アルプスの木曽駒ヶ岳に登った。木曽駒ヶ岳に登ったときには十分な時間を取れなかったので、山麓からのロープウェイがあって歩かなくても山頂付近まで行くことができるこの山を選んだ。紅葉シーズンのロープウェイ乗り場には観光客で長蛇の列ができると聞いていたが、大自然の中に入っていくために行列に並ぶなんて是非避けたいことなので、私たちは昼過ぎに登り始め、山荘に宿泊して翌日の昼ごろに降りる工程にして行列を避けることができた。
  6年目に登った南アルプスの甲斐駒ヶ岳は、稜線や山肌の美しさで有名な山なので非常に楽しみにしていた。そして、実際に登ってみてもその期待を裏切らなかった。登っていくにつれて、山頂付近の色や形が変化して見えるなど景色の変化が多くて退屈せずに歩くことができた。その翌年に登った会津磐梯山も山肌や風景の変化が多く退屈しない山であった。また日帰りで戻れるのでふもとの温泉も楽しむことができた。
  私は全くの登山未経験者から登り始めたが、いまは登山道が整備されているしガイドブックに注意点が細かく書かれているので、安全に楽しむことができた。また、登り始めたころは山に登ることだけを楽しんでいたが、下山してからの温泉を楽しむようになってきた。このように登山の楽しみにはいろいろな形があり、それにあった山も多くある。だから、山に興味がある方は是非ガイドブックを購入して、日程や自分の望むものを考慮したうえで気軽に挑戦してもらいたい。私も、富士山や立山などまだまだ登りたい山が残っているので、順に制覇していくつもりである。



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