教室だより
洛友会会報 211号


電気系教室懇話会報告

 

  平成17年度の電気系懇話会は11月11日(金)に約120名の参加のもとに開催されました。 電気工学専攻、電子工学専攻は平成15年夏に桂キャンパスに移転しましたが、懇話会は昨年まで従来どおり吉田キャンパスで開催していました。今年は初めて桂キャンパスBクラスターの「桂ホール」(第一部講演会)、「カフェ・アルテ」(第二部懇親会)で行われました。また、これまでは電気系教室主催でしたが、今年から洛友会が共催という形で行われました。当日はあいにくの曇り空で、講演開始の頃から雨が降りはじめるあいにくの天気となりましたが、多くの教職員・院生・学部生・卒業生にご参加いただきました。
第一部の講演会では電気工学専攻長の小林哲生教授が司会を務められました。ご講演に先立って、電気電子工学科長の橘邦英教授からご挨拶がありました。

最初のご講演は、田邊輝義氏(昭和44年卒、株式会社ビスキャス代表取締役社長)による「固体絶縁超高圧ケーブルの開発沿革と今日の事業課題」でした。ご講演の冒頭、ビスキャスという会社の社名の由来(ラテン語のPowerを表すVISとCable and System)と生い立ち(古河電工とフジクラの融合)についてご紹介いただきました。ご講演では、50万ボルト地中送電のための超高圧ケーブルがいかにして開発されたかを分かりやすくお話いただきました。感銘したのはケーブル絶縁体中のμmの不純物の存在を丹念に調べては除去することで、はじめて50万ボルト用のケーブルができるというお話でした。「μmを制してM(メガ)を実現する」という合言葉のもと開発されたということです。現場でクリーンルームを作り100トンあるケーブルを接合していくというお話には驚嘆するばかりでした。商業レベルでこのケーブルが製造できるのは、現在は日本だけとのことです。これからの事業課題としては、市場が海外に移るとともに、日本におけるプロジェクトが減り、そのため若い世代の経験が減ることで、トラブルが起こったときの対策が問題になってくるとのお話でした。

2番目のご講演は松田晃一氏(昭和43年卒、NTTアドバンステクノロジ株式会社代表取締役常務)による「情報システムの研究開発、今と昔」でした。コンピュータシステムの高信頼化の実現に関するこれまでの研究開発についてお話いただきました。入社当時、電電公社(当時)の国産最高速計算機システム(Denden Information Processing System, DIPS)の開発途上で、その研究開発に参加されたそうですが、故障率の高さが問題になっていたそうです。全く故障しない計算機の実現は現実的には無理なことから、ホットスタンバイという、複数の計算機を利用する方法をご考案になり、利用者に故障を感じさせないシステム(ノーダウンシステム)を作ることで、信頼性を1桁上げたことなどをご紹介いただきました。最近は大型のメインフレームは時代遅れになり、クライアントサーバ型に移行しており、ダウンサイジングが進んでいること、単一ベンダ型から複数ベンダ型になりつつあることなどをご説明頂きました。また、現在の課題についてもご説明くださいました。その中で、これからの研究開発で重要なのは「人材・経験」であるとのメッセージを頂いたのは、1番目の田邊氏がご講演の最後にお話になられた「経験の不足という問題」とも相通ずるお話だったかと思います。

休憩をはさんで3番目のご講演は長尾真先生(昭和34年卒、名誉教授、元京都大学総長)による「研究生活40年」でした。長尾先生は長年の情報メディア分野でのご研究に対して日本のノーベル賞とも言うべき「日本国際賞」を平成17年4月に受賞されました。受賞業績は「自然言語処理及び画像の知的処理に対する先駆的貢献」です。今回のご講演はその受賞記念講演といった意味合いもあり、これまでの研究生活を振り返っていただきました。40年の研究を振り返りながら、「研究者たるもの如何に研究を進めるべきか」について多くの示唆をいただきました。研究論文の読み方・書き方、研究テーマの選び方として流行を追わないこと、研究には波があり、ひとつの研究の成熟期に次のテーマの種をまくことなど、長尾先生のこれまでの研究を例に取り分かりやすくお話いただきました。上司の説得の仕方や研究費をいかに獲得するか、後進の指導についてもその秘訣をお話いただきました。新しいテーマに取り掛かるときに「すべての論文を読む」という態度、現実に数百の論文を3ヶ月で読破されたとのお話を伺い自分の普段の態度を反省しました。また、「10年やっていて世界一流にならねば失格である」の一言は身にしみました。
  いずれのご講演も、講師の先生方がこれまでに携わってこられた研究開発を例に取り、どのように問題に取り組んできたかを分かりやすくご説明いただくと同時に、これからの研究開発の問題点を提起していただき、今後研究開発の主力を担うと考えられる若手教員、院生・学部生にとっては貴重なメッセージになったと感じました。

第二部懇親会は、午後5時30分より同じ桂キャンパスBクラスター・福利厚生棟内のカフェ・アルテにおいて開催されました。司会は電子工学専攻長の石川順三教授が務められました。懇親会の冒頭、工学研究科長・工学部長の荒木光彦教授からご挨拶がありました。ご参加いただいた名誉教授の先生の中で最年長の小川徹名誉教授に乾杯の音頭をとっていただき、その後は講師の先生方、名誉教授の先生方、教職員、院生・学部生が懇親を深めました。カフェ・アルテは、平成17年4月に桂キャンパスに開業した京大生協のカフェ(喫茶)です。普段は広く思えるカフェも120名を越える参加者でいっぱいになりました。途中、洛友会幹事の木村磐根名誉教授のスピーチがありました。懇親会の最後は、この日夕方まで吉田キャンパスで3回生の学生実験をご指導いただいた後、桂キャンパスに駆けつけられた通信情報システム専攻長の吉田進教授のご挨拶で締めくくり、午後7時30分にお開きとなりました。
  最後になりましたが、ご講演を快くお引き受けいただいた講師の先生方をはじめ、遠方よりご参加いただきました卒業生の皆様、ご参加くださった教職員、院生・学部生の皆様に厚く御礼申し上げます。本年度より共催となりました洛友会にはサポートをいただきました。また、本報告作成においては、電気工学専攻の濱田昌司先生、電子工学専攻の酒井道先生のご協力を得ましたことを申し添えます。(後藤 康仁(昭60年卒)記)

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