会員寄稿(1)
洛友会会報 212号


学術研究と大学の国際的評価(続)

岩崎弘三(昭和28年卒)

2.大学の国際比較
(1)スイスのビジネス・スクールによる比較
  世界24カ国で同時印刷され、時差の関係で日本が最も早く読めると言われているFinancial Timesの 2004-1-26号に、スイスの有名なビジネス・スクールが2002年に実施した大学の国際比較が掲載されています。対象とした49ケ国中、日本は49位であり、義務教育におけるサイエンス教育は30位であると報道しています。

(2)上海交通大学による「世界のトップ500大学」調査
  これもたまたま、上記と同じFTの2004-10-16/17週末合併号ですが、2ページに亘ってEUが大きく騒いでいる世界のトップ500大学の記事を載せています。そのタイトルは「如何にしてハーバードは先頭に立てるようになったか」であり、副題は「豊かで超競争的な米国のライバルが順列に挑戦するまで:オックスフォードとケンブリッジは世界における2個のピークと考えられていた。いまや、英国の主な教育関係者は、1960年代の平等主義を、新しいアカデミック・エリートのために、放棄することを期待している」とあります。因みにケンブリッジは3位、オックスフォードは8位で、科学系ノーベル賞も1970年代までは世界の1−5を獲得してきたのが、1−10以下になったと嘆いています。
  その詳細は、Webを利用して[World Top Universities]などで検索できますが、比較の根拠は、人海戦術を厭わない中国らしく、卒業生の活動、ノーベル賞受賞数、学会誌での被論文引用数、Nature, Scienceなどへの掲載論文数などを調査し、公平にするために規模を考慮に入れていますので、奈良先端科学技術大学なども入ってきます。日本では、100位までに北海道と九州を除く旧帝大、続いて、北大、九大と続き全部で35大学が、世界の500大学に含まれます。
  ちなみに、上海交通大学は、中国の一流大学で、九大、名大、立命館大、早大など多くの大学と、協定を結んだり、研究員・留学生の交換などを行っています。
文部科学省が、30余りの大学を特別扱いしようとしている根拠は、マスコミに現れませんが、数値的には似ているのに驚かされます。

(3)私立大学の学生の動向
  私の住居の近くに、女子学生が多い私立大学が2校あり、10時過ぎや12時過ぎの大学向けのバスは非常に混んでいて、車内では「週に1日は大学に行かない自由な日を設けている」などと話しています。大学へは4日間、しかも短時間行っているに過ぎません。最も熱心に勉強し、学問も身に付け、人間として成長する時期に、親のスネを齧り大学に遊びに行っているのです。これでは、日本流に卒業をさせてもらっても、気楽な生活から厳しい就職生活に入れずに、安易なニート族などに多くの若者がなるのも当然と思います。
  イラク戦争の勃発直前に、当時予想された避難民受け入れの準備にヨルダンに出かけたことがありました。このとき、他の団体から、洛友会員も工学部の教授になっている、かなり名の知れた私立大学の英文科卒で、外国でも働いていたという30歳半ばの人と行くことになりました。このような人ならば英語も流暢で、こちらは負い目を感じることになるだろうと心配していました。しかし、あまりにもひどく「大学で何をしていたのですか」と尋ねると「テニスをしていました」との回答に「テニスをしていただけで、大学を卒業させてもらえるのですか」と驚いたことがあります。

(4)会社における状況
  かつて、日本電気株式会社の系列会社で、70名余りの技術系大学卒を採用し、社内教育後、試験をしたところ、95点から10点まで分散した経験があります。本来ならばエリートとしてどんどん良い仕事をさせて成長させるべき人まで含めて、全員を大学卒として同程度に扱わねばならぬ日本の無駄を、私たちの若かった頃と比較して感じます。
  人口が日本の半分の英国の大学数は131校に過ぎず、他の欧州諸国も似たような状況であるにも関わらず、日本は、700余りの大学を作り、国も地方も親も随分無駄なことをしていると思っています。



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