会員の寄稿(4)  
洛友会会報 217号


インド旅行記(中編)

岡崎 幸治(平8年卒・九州支部)



 私が29歳の時にインドへ一人旅に出た際のことについて、昨年の4月号の会報に前編という形で寄稿させて頂いた。今回はその続編という形で寄稿させて頂くものである。
 前編と重複するが、その頃はまだ独身だったこともあり、年に1回,1週間くらいの休みがとれると,海外へ1人旅に行くのが常であった。そのときはパック旅行などを利用するのではなく、飛行機の往復チケットのみを購入し、宿泊は現地で探す。宿泊にはホテルは使わず、日本円で1泊100〜300円くらいの安宿に泊まったりして、ひと時のバックパッカー気分にひたるのが楽しみだった。
 社会人になってから何度かそのような旅に一年に一回程度出ていたが、その中でもインドが一番刺激的で印象に残った。本稿では、その時の2日目からの行程を記す。
 初日に泊まっていたのは、インドの首都デリーの中の、メインバザール(別名バハールガンジー)という世界中のバックパッカーの間で有名な安宿街にある、「Ajay Guest House」という1泊170Rs(日本円で約300円)の安宿である。朝5時頃に、ヒンズー教の宗教音楽みたいな音で目覚めたので、インドの街をまず散歩してみようと思い、宿を出た。1日目は深夜にインドに着き、宿が手配してくれた出迎えの車でつれられてきたため、辺りのようすがわからなかったので恐る恐る通りに出てみた。その時の外務省のホームページで、メインバザール危険度1(十分注意が必要)と出ていたため、実はかなりビクビクしていた(過去に爆弾テロがあったらしい)。
 通りに出てみると、日本ではありえない眺めが広がっていた。漠然と持っていたイメージよりも雑然としており、現実感が湧かない光景のように思えた。チャイ(ミルクを入れた紅茶のような飲み物。インドではどこでもおじさんが売りに歩いている)売りのおじさんが道端でにぎやかに独特の節回しで「チャイ、チャイチャイ、チャーイ」と呼びかけており、道をいかにもインド人という感じのたくさんの人がにぎやかに歩いている。通りは本当にインドのバザールという感じであり、しばらく歩くと、野良牛が道の真ん中を悠然と歩いていた。本で読んだりしていて予備知識があったが、インドでは本当に道の真ん中を、しかも首都の繁華街を堂々と歩いていた。こういう光景を見て、本当にインドに来てしまったのだという実感が湧いてきた。
 少しうろついた後、朝食を食べるために宿へ戻った。朝食は、パンが売られていたため、2つくらい食べ、更にチャイが売られていたため、ここで体験してみようとチャイを飲んでみた。砂糖を入れた普通の紅茶という感じであり、ちょっと拍子抜けだったが、今考えると欧米人の多い安宿なので、欧米人向けの味にあわせていたのかもしれない。
 その後、インドでの旅の手配をしようとカウンターへ行った。この宿はツアーや電車のチケットの手配も頼むことができる。「地球の歩き方」で紹介され日本人向けにかなり売り込んでいる宿であり、宿の主人も日本語が達者なため、安心して旅の手配を頼むことができる。1週間程度しかない日程なので、電車のチケットの手配等は頼んで時間の節約を図ることにした。
 デリーの他のインド内での行き先として、ガンジス川での沐浴で有名なベナレスと、ヨガの修行の聖地として知られるリシケーシュの2つを考えていたが、ベナレスがあまり治安がよくないのと穏やかな田舎でゆっくりするのがよいかと考え、リシケーシュへ電車で行くことで、電車のチケットの手配を頼んだ。また、タージマハルも見てみたいと思い、3日目をタージマハルのあるアーグラーへ行く現地ツアーを頼み、4日目から7日目で、リシケーシュとその近くのハリドワールへ行く特急の往復のチケットを手配してもらった。
 その後、改めて繁華街へ出て、その日はデリー市内を観光することにした。バザール内は人が増え、一層にぎやかになっていた。日本とは全然違う光景に気分が高揚してきつつ歩いていくと、盛んに声がかかる。「Hello, Sir! Where are you going」。そして盛んにいい旅行会社があるからと行こうと連れて行こうとするのだ。出発前に仕入れていた情報で、そのような旅行会社に連れ込まれると、数人の男に囲まれ監禁され、法外な値段のツアーを申し込むまで出られなくなると手口を行うようなことを知っていた。一瞬にして恐怖を覚えるが、何とか振り切り、歩いていく。そのような観光客をだまそうとして声をかける輩は首都だけに次々に出現する。少し気分がいいのが、私のような者に「Sir!」と声をかけることだ。インドはイギリスの植民地だったので、イギリスの習慣が残っているのだろう。 
 それらの男たちに次々と声をかけられるのを振り切りながら、歩いていくと、ニューデリー駅のある交差点に出た。多くのインド人が行き交っているが、皆信号を無視して交差点を渡っていっている。たくさんの車が道路を通っていくので、よく事故が起きないものだと感心しながら、自分もインド人に習って交差点を渡って行った。交差点のところに、自転車の後ろに座席があり、自転車をこいで人を乗せていく、リキシャーの集団がいた。リキシャーも体験してみようと、声をかけてみる。料金交渉を行い値引きしてもらった上でリキシャーに乗ると、普段味わえない体験なので、なかなか気分がいい。
 リキシャーでデリーの中心のコンノートプレースまで行き、降ろしてもらった。コンノートプレースはいかにもイギリスの建築という感じの建物ばかりで、バザールと違いおしゃれな雰囲気がただよっている。
 しかし、ここも私を狙う男たちがいた。ショッピングセンターらしきところへ行こうとすると、「Hello, Sir!」と言って私の足元を指差してくる男がいる。その声につられて足元を見ると、なんと泥か大便かわからないようなものが私の靴についていた!そしてその男は私の靴を拭いてやろうと言ってくる。観光客から靴磨き代をせびろうとしてわざと靴を汚す、よくある手である。またしてもやられてしまった。ここでも、インドに来たんだと実感を強めた。
 中篇なのに2日目の途中までしか行きつかなかったが、続きはまた続編を書かせて頂く機会があればペンをとりたいと思う。

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