会員寄稿(2)
洛友会会報 219号


サロン・コンサートの企画をはじめて

安井 敏雄(昭41年卒・東京支部)

 人と人との「出会い」は、様々です。「めぐりあい」が、お互いの関心事を共有し、発展させてくれます。そして、それは自分が経験しなかった分野で活躍する人々や、異なる領域・文化への理解を一層深めてくれます。
 私は、ブロードバンドADSLや携帯電話の新規事業者として参入しているテレコムベンチャー企業の経営幹部として、めまぐるしく過ごしていますが、多くの人とのクラシック音楽での接点が、いまサロン・コンサートという形で醸成されつつあり、人生で幸せな出来事を創り出しているのではと密かに感じています。
 京都洛星高校でオーケストラ部の創設に関わり、京都大学に入学後、京都大学交響楽団でその活動に「感動をつくる喜び」を見いだし、「情熱」を注いだ毎日を過ごしていました。
 「反戦・自由」の京大の気風は、交響楽団が毎年2回の定期演奏会を戦争中も一度も欠かさずに続けたという歴史や伝統に表れており、「その革新性」は、私が入部時、いまでは多くの大学のオーケストラでも当たり前になりましたが、プロの指揮者を外部から迎え厳しく指導を受け自分たちで納得のいく音楽を創り上げていくことを先輩がはじめた時期でした。「オケ改革」とでもいうのでしょうか。
 この結果、若杉弘、岩城宏之、秋山和慶、奥田道昭、朝比奈隆、近衛秀麿といった当時の桐朋学園や東京芸術大学出身で活躍されていた若手指揮者の方々や、すでに著名な方などから演奏会ごとにご指導を受ける機会を得ましたし、交響楽団が素晴らしい飛躍をしたときで東京特別公演を企画・実行しました。
 熱意あまって多くのオケ仲間が留年する結果になり、私も真剣に悩みました。
 これ程熱中した音楽ですが、アメリカに留学した途端に楽器を手にしなくなりました。
 社会人になっても音楽を続け、オーケストラ活動など続けている友人をみると、仕事と楽器演奏の両立を続けるような器用さは自分にはないなと羨ましくまた感心してきました。
 ビジネスの第一線からも身を引いたので、好きなことをやろうと模索し始めたのは三年前のことです。
優秀な女流若手バイオリニストの梅津美葉さんと偶然再会し気がついたら音楽に回帰していました・・・・・・といっても、楽器演奏ではなく、サロン・コンサートの主宰です。
 私という個人レベルでも「何ができるのかな?」と模索し、「自分たちでできることからやろう」ということで、家内と二人で始めました。曲目や共演奏者など梅津さんに企画してもらいます。クラシックの室内楽を生の音で、しかも一流奏者のすぐ近くで聴き、その後緊張を解かれた奏者の方たちと家内の用意したワイン・パーティで歓談懇親いただくものです。秋に鎌倉・東京 春に京都と回を重ね、皆様からも大変好評です。
 二百名近くの方がお越し下さるようになり恩師の矢島脩三先生ご夫妻、木村磐根先生、長尾真先生ご夫人、池田克夫先生ご夫妻、故上林弥彦先生ご夫人など音楽に興味をお持ちの先生がたも熱心にお越しいただいています。
 そうこうするうちに夏のシーズンにもうひとつの「音楽」活動が増えました。八ヶ岳を望む蓼科・三井の森にあるコンサートホール付の宿泊施設に、プロとアマチュアの演奏家達が集い空気の澄んだ緑一杯の森の中で室内楽を中心に音楽合宿、それにゴルフの好きな仲間が一緒になって集う楽しい企画です。練習成果の演奏発表と、技術・ビジネスなど各方面の分野の講演からなるレクチャー・コンサートを開き、終了後に打ち上げパーティを開催。全員一緒になってグラスを傾けつつ自分の知らない異なるいろいろな分野のことを話すという趣向です。今まで講演も「電磁波と健康」、「日本の携帯電話はなぜ高いのか」さらには「液晶ディスプレイではなぜ金色は出ないのか」などありました。今年は第2回目でしたが、十年のスパンで充実したものをと考えています。
 高校・大学での先輩であるフルート奏者佐々木真さんと始めたものですが、その趣旨から「コミングル@蓼科」の会と名付けています。電気系同窓生の、千本倖生夫妻、藤林信也夫妻、今中良一、松本幸男、江上貞夫,織田莞二、後輩の小林紘一の諸兄も積極的に参加して下さっています。
 こうした活動ですが誰のためというより、「自分自身が好きでしているんだ」と「気負いのない自然体」です。「少しでも多くの方たちに音楽を好きになるきっかけをつくり、若い人たちには人の道を誤らないことを考える機会を与えることができれば」とは秘かに願っています。
 新聞では、毎日親が子を、子が親を殺すような記事ばかりが目につき、人々はそれに驚かなくなってきています。
 ごく当たり前に「気の毒」な人への「思いやり」や「人の心の大切さ」を想う心を取り戻すことに、少しでも役立つことができればと。
 自分の育った時代、ものの貧しさはあったけれども「心」を教えてくれた親、先生、学校、近隣づきあいの「教育環境」を思い起こします。
 小学校時代の音楽の先生が「ハーモニカを吹くのが上手だから、ヴァイオリンを習わせたら」と、母に勧めてくれたことがここまでの趣味に発展したと思うと、クラシック音楽を通してもし誰かに「何か一つ好きなこと」を与えるきっかけを作ることができるならば、大変やり甲斐のあることのように思えます。
 昨今いわれる「美しい日本」の国づくりに、私も少しは関係し、寄与することができるとも思っている次第です。
 ご興味あるかたは、是非 www.commingle.jp をご覧ください。ご連絡もお待ちしています。

 本文中に、恩師の先生方や奥様、さらに同窓生諸兄に断りなくお名前を掲げさせていただきましたことをお断りします。ご理解の程お願いします。






  ページ上部に戻る
219号目次に戻る



洛友会ホームページ