巻頭言

洛友会会報 221号


Think About the End Before the Beginning

東京支部支部長 
向井利典(昭41年卒)

  ここ数年、個人情報保護法の施行とも関連して、洛友会は大きな変革の過程にありますが、東京支部においては、特に若手会員の参画意識の向上策として講演会の開催や勉強会の立上げなどに力を注いできました。また、従来から卒業年次毎に学年幹事を設けていますが、今年度に入り、全ての年次の学年幹事が選定されました。洛友会支部活動行事の通知などは、支部幹事からの連絡だけでなく、親しみのある同期の学年幹事からも個人ベースで知らせ、参加促進を呼びかけています。このようにして、それまで減少傾向にあった会費納入率の低下に歯止めをかけ、支部活動への関心も徐々に回復気味になりつつありますが、今後の活性化に向けて先輩会員には引き続きご指導いただくとともに、若手会員には気軽に支部活動行事にご参加いただき、あるいはまた、学年幹事等を通じて積極的なアイディアをご提供いただければ幸甚であります。なお、ご参考までに、東京支部のホームページは http://www.rakuyukai.org/tokyo/ にあります。

 さて、標題の言葉はイタリアのルネサンス期を代表する偉人レオナルド・ダ・ヴィンチが言ったとされています。レオナルドは、本業の有名な画家としてだけでなく、科学技術の広範な分野に足跡を残した万能の天才でありましたが、この言葉は「システムズ・エンジニアリング」(Systems Engineering、以下、SEと称する)の真髄を表すものと紹介されています。なお、SEを日本語に直すと「システム工学」となるのでしょうが、グーグルで検索すると38万件余りにヒットします。ハード、ソフトにかかわらず、何か新しいものを開発しようとするとき、システムという捉え方によりエンジニアリングを考えるのは重要な事です。そのため、このように多くの場面で使われているのでしょうが、全てが本来の定義に則って正しく使われているのかどうか? 
 一方、英語のままで検索すると、6万4千件ほど、その2番目に INCOSE (International Council on Systems Engineering) がありますが、そのホームページに本来の定義が載っています。そもそも、SEというのは、米国で宇宙開発が始まった頃に生まれたもので、これまでに無いものを開発するためのエンジニアリング/マネジメントの手法として考え出されたものを体系化したものであり、その集大成がアポロ計画と云われていますが、今もなお、新たな手法などの研究や様々な分野の開発への適用が活発に行われています。
 SEの本質は、開発開始に先立って行うべき顧客のニーズと要求される機能の定義、即ち、要求分析にあるわけですが、これが正にレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉につながります。しかし、本当に良いシステムを作るための「顧客のニーズの分析」というのはそう単純ではありません。何か新しいものを開発しようとするとき、それはプロバイダー指向ではなく、ニーズ指向、即ち、真の顧客を見つけ、あるいはまた、顧客自身が気付いてない真の要求を導出することがこれからの時代に最も必要とされている事と思います。
 この事は昨年の東京支部総会における千本倖生氏の講演を聞いた時や CUE No. 18の安井敏雄氏の論文を読んで感じた事とも相通じますが、偶々、お二人とも我が同級生です。また、洛友会長が前京大総長の長尾真先生であり、長尾先生に引き続いて(実際は、現総長の尾池先生を間に挟んで)松本紘先生が10月からの次期京大総長に選定されましたが、他にも多士済々、お互いに偶然の運命的なものとはいえ、洛友会という輪の中で人と人とのつながりを大切にしていくことが会員諸氏にとっても得るところが大きいと思います。これからも洛友会の活性化に貢献していただくようお願いいたします。



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