会員寄稿(2)
洛友会会報 221号


囲む会について

望月 和之(平14年卒・中国支部)

 この3月、私は卒業して4年が経ちました。この4年の間で、世の中の情況も随分と変わりましたが、私の方も学生時代とは一変した新生活をスタートさせ、新鮮な経験もしましたので、今回はその中からご紹介をしたいと思います。
 この4年で就職事情は様変わりし、学生の売り手市場となってきたようですが、私の卒業当時はまだまだ就職氷河期であり、周りには就職したくてもできない同世代たちがたくさんおりました。私も数社の企業説明会に参加させていただきましたが、「応募者はたくさんおります」風の説明もいくつかあったのを覚えております。そのような中で私は、ご縁あって、中国地方の企業に行くことになりました。
 平成16年4月から3ヶ月間の研修生活を経て、平成16年7月、岡山で社会人生活がスタートしました。それまで京都・大阪から出たことのなかった私にとっては、ここでの生活は、新鮮で充実した毎日でした。当時の私の仕事はというと、送電線の保守であり、地上数十mの高さにある幅数cmの鉄鋼の上での作業や、幅数cmの電線に乗っての作業というのも経験しました。もともと高い場所に行くと足がすくむ方だったのですが、やればできるんやなと自分の事ながら感心しました。もちろん今でも高いところは苦手ですが。
 そうこうしているうちに、偶然、大学時代の友人とネット上で再会しました。平成18年の初夏のことだったと思います。社会人になってからというもの、同級生と交流する機会があまりなかったのですが、これをきっかけに連絡を取り合うようになりました。その中で、やはりネット上だけでなく定期的に顔を合わせようということで、平成19年2月に1泊2日で岡山県蒜山・湯原地方への旅行を計画・実行しました。
 旅行当日は、10時にJR岡山駅集合。岡山ICから山陽自動車道・岡山自動車道を経て、途中、霧で有名な高梁SAでの休憩を挟んで、蒜山ICへ。目指すは蒜山ジャージーランド。初日の昼食は、公募によりチーズフォンデュ。チーズをパンや温野菜にからめながらおいしくいただいていた折、メンバーにチーズ嫌いの人がいたことが判明しました。しかし、とびきりのチーズに出会い、彼もチーズのおいしさに触れて感激していた様子でした。食後は、「広大な蒜山高原の中で手を腰に据え、新鮮なジャージー牛乳を飲み干したい」という強い要望があったので、広くなだらかな山裾で多数のジャージー牛が見守る中、皆まるで学生時代に戻ったかのような飲みっぷりを見せ合いました。そんな風に蒜山の自然を満喫した後、本日の宿、湯原温泉へ。
 湯原でチェックインをした後、まだ日暮れまで間があったので、温泉街の散策に出掛けました。その後、食事、温泉と、いつでも眠れる体制を整えた後、今回の旅のメインである宴の始まり。この宴の中での企画として、各人、今一番考えていることを手短に話す、という課題を事前に与えていました。気軽な感じでやってみようということになったのですが、意外と難しかったように思います。しかし、自分が今何を一番考えているか、という問いを通じて、現状に甘んじることなく未来を見据え、自己の成長に励む彼らの一面を知ることができました。
 2日目の朝、名物砂湯を見学した後、北房を通って、満奇洞へ。ここは、与謝野晶子が「奇に満つる」と詠ったことから命名されたともいう洞窟で、中に入ると、他の観光客がほとんどおらず、ほぼ貸切状態。広いところや狭いところ、滝や池など変化に富んでおり、自然が創り出した奇を堪能しました。昼食は、参加者特製のそば。そば打ち体験に行ってきました。皆初めての体験でしたが、店のおやじさんの気持ちの良い指導のおかげで、おいしいそばができあがりました。
 旅の締めくくりは、吉備津彦神社。そこでは偶然ボランティアの方による桃太郎伝説にまつわる話も聞くことができました。「当時吉備の国を治めていた豪族の力を恐れた朝廷が吉備の国を滅ぼしにやってきた話が、桃太郎伝説として残っていますが、この話は朝廷を正義とする見方で描かれています。吉備の豪族からすると、鬼は朝廷側ですけどね。」と苦笑されながら話されておりました。立場によって解釈が変わってしまう。これは歴史ばかりではないことを、社会人になってからというもの、日々の生活の中で十分に実感しております。
 囲む会と称した旅はここで終わりましたが、今回の話は、とあるインターネットのコミュニティサイトでの偶然がきっかけでした。今後も、ひとつひとつの出会いを大切にし、その中で各人の成長を確認しあい、自分たちの刺激となるこの囲む会を続けていきたいと思います。


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