会員寄稿(3)
洛友会会報 223号


環境に優しい家作り(その1)

薗田 徹弥(昭51年卒・九州支部)

 三十二年にわたるサラリーマン転勤族の生活の中で、常に夢に描いていた木造無垢の終の棲家を実現しました。基本設計着手から完成まで一年半。五十路を過ぎて、最後の体力を振り絞っての我が家でした。家作りにあたってのテーマは環境との共生。自然素材、自然エネルギーを日々の暮らしに生かす住み方を目指しました。施工は熊本のある工務店にお願いしましたが、その会社もロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability :健康と持続可能性を目指すライフスタイル)な暮らしを提唱していましたし、その工務店さんの福岡進出とタイミングが一致し、いろいろな面で先進的なものを取り入れたモデルハウスとして仕上がりました。これまでも多くのお客様にお越し頂いて、木造無垢の家の香り、アイデア満載の機能的な作りを体験して頂いています。
 家作りにあたっての基本は、経済性、デザイン性、機能性のバランス感覚と納得感だと思います。自分の懐具合を勘案しながらおしゃれで住み易い機能的な家作りを目指す。人任せにしない、自分の目で確かめ納得するまで議論し行動する。終の棲家作りは一生に一度あるかないかの一大事業です。プロセスを徹底することで、満足感のある夢が実現するものと思います。
 今後、何回かに分けて、我が家の特徴的な事項について述べていきたいと思います。

・太陽熱の利用
 吹抜けのリビングルームを持つことも夢に描いていました。しかし、吹抜けは冬の寒さ対策が問題で一般的に寒くて使いづらいとはよく聞いていました。そのため、OMソーラーシステムと呼ばれる太陽熱を利用した全館暖房システムを採用しました。これは、冬は冬らしく、夏は夏らしく過ごしながら、ほどほどの温かさ、涼しさを得ようというシステムです。冬に薄着でいられるような温度を得るという暖房ではありませんし、夏に体が冷えてしまうような低い温度を求めるものでもありません。
 冬は屋根に降り注ぐ太陽の熱で空気を温めそれを床下に送り、基礎コンクリートに熱を蓄えます。蓄えられた熱は、夕方以降ゆっくりと放熱して建物全体を床から温めます。また、OMソーラーシステムが稼働している間は、常に新鮮な外気を室内に取り込んでいます。暖房しながら換気ができるという点も、冬の働きの大きな特長です。このシステムに特有な構造として、屋根に集熱するためのガルバリウム鋼板とその上に強化ガラス、集熱した空気を床下に送り込むハンドリングボックスと立ち下がりダクト、蓄熱のための断熱コンクリート基礎、基礎に蓄えられた暖かい空気を部屋に送り込む床吹き出し口等があります。断熱効果の高い断熱材の利用で、このシステムの効果がさらに高まります。
 このシステム導入においては、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金を申請することができます。システムを導入しなかった場合に比べ、石油やガス等の化石燃料を大幅に減らせることから、補助金対象となっているものです。補助金を受けると、三年間はエネルギー使用量の報告義務があります。
 太陽の熱を利用するこのシステムは、曇天や雨天で太陽の熱が期待できないときは、補助暖房としてガス・灯油を使ってお湯を沸かし、熱交換の原理で床下の空気を暖めて部屋に送り込みます。我が家では都市ガスを補助暖房に使っています。
 夏になっても、OMソーラーシステムは働きます。昼間、屋根に降り注ぐ太陽熱で高温になった空気は、システムと直結されている貯湯タンクとの連携でお湯取りに回ります。それでも余った熱気は、外に吐き出されます。夜になり、外気温が室内温より低下すると、外の空気を取り込み始め、ダクトを使って床下空間にこの涼しい空気を送り込みます。その状況は各部屋にある床の通風口からひんやりとした風が出てくることで分かります。

・太陽光の利用
 太陽の光を利用しての明かりがあります。一つはソーラーLEDライトというもので、日中に五時間日が当たれば夜に十時間点灯します。配線もいらず、十年間は持つとのことです。防犯にも役立ちますので、庭に立てています。もう一つは、ソーラーLEDブロックで、やはり昼間の太陽光でエネルギーを充電し、暗くなると点灯する自然エネルギー利用の明かりです。玄関に至るアプローチに採用しました。取り付けて間もない夕暮れ時、郵便配達の方がこれを見てちょっとびっくりされていましたが、その配達員は女性の方で、足元をほんのりと照らすライトを見て、階段の昇り降りに安心だとの言葉がありました。
 太陽光発電システムも採用しています。しかし家全体で利用するような大型ではなくて、先に述べたOMソーラーシステムが商用電源が切れたときでも稼動するように、必要最低限の五十五W出力の発電パネル三枚が屋根に搭載されています。

・雨水の利用
 玄関脇に雨水タンクを設置し、雨水を再利用しています。このタンクは二五〇L仕様で、福岡市の「雨水貯留タンク助成金交付」を受けました。我が家の玄関回りの草花による飾り付けにこのタンクの水が大活躍しています。タンクの色も自然色のグリーンで、自然との共生、自然エネルギーの活用にふさわしいものです。

・生ゴミの再利用
 生ごみ処理についてです。家庭から生ごみを出さずに循環させるコンポストに取組んでいます。福岡市でも「段ボール箱を使った生ゴミ堆肥化講習会」を定期的に実施していますので、この講習会で生ゴミから堆肥を作る方法を学びました。ゴミを出さずにかつ草花の育成にも役立てる一石二鳥を目指しています。
 今回は、自然エネルギーの活用について述べました。次回は、自然素材について記述します。

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