会員寄稿(4)
洛友会会報 225号


環境に優しい家作り(その3)

薗田 徹弥(昭51年卒・九州支部)

 前回、前々回、自然なエネルギーの活用や自然素材の利用について述べました。今回は100年住宅と呼ばれる我が家の構造的な特徴について記述します。

・現場主義
 約一年半の設計、施工の期間、私どもの家作りに対する基本姿勢は現場主義でした。パンフや図面で部材や製品の説明を受けても必ず現地や住宅展示場、ショールームにおいて、現物を確認することを怠りませんでした。もちろん工務店さんの会社に行けば基本的な部材は揃えてありますが、オプションになると直ぐには見られないケースが多く、工務店さんにその部材を使用している現場を紹介してもらったり、ネットで調べて探し出してから現地へ確認しに行ったりしたことが多くありました。図面上、パンフ上でのイメージと実際が異なることはよくあります。少し体力と時間は必要ですが、後で後悔しないためにも現場主義、現物主義は大切だと思います。
 施工の様子も日々把握するため、妻に毎日現場へ行ってもらいました。当時住んでいた所から建築現場までバスで20分。大工さん達への激励のお茶入れを兼ねてのほぼ毎日でした。今の時代はデジタルカメラがあるので、大量撮影が可能です。毎回100〜200枚撮ってもらったので、トータルで一万枚以上の写真が記録として残りました。これら現場の写真を日々パソコンで分析し、設計内容と異なる部分や理解できない事項を工務店さんにメールで確認し、建築工事の進捗を私の個人的な専用ブログを立ち上げてそこに日々アップしていきました。

・断熱コンクリート基礎
 前に我が家では、OMソーラーシステムと呼ばれる太陽熱を利用した全館床暖房システムを採用したことを述べましたが、このシステムは、密閉された基礎が前提になっています。一般的な家屋の場合、基礎の立上り部分は通風を確保するために土台との間にパッキン等により隙間を設けるか、通風口を確保しますが、我が家では鉄板屋根で温められた空気を基礎に送り込んで、床吹き出し口から部屋へ暖気を送り込みますので、基礎空間は外部と切り離されています。さらに、基礎の内壁で外と接する部分には断熱材が張られ、システムの効果を高めています。

・引き戸と開き戸
 我が家には部屋の扉が一階二階合わせて11枚ありますが、その中で引き戸は10枚、すなわちほとんど引き戸です。さらに引き戸には戸袋は一枚もありません。これらは担当の工務店さんのこだわりで、通風を確保するために引き戸が大前提になっています。引き戸はたとえお客様がお出でになっていても途中まで閉めて風が流れるようにすることが可能です。各部屋の扉は基本的に年中開けっ放しですので、洋風イメージの我が家にとって、その形式が引き戸か、開き戸かはデザイン上の問題にはなりません。常に清潔に保つために戸袋も作らず、扉開けっ放しの風通しのよい家を実現しています。

・外壁通気工法
 長い家作り作業を見ていて、私が最も感心したのが外壁通気工法です。この工法はいわゆる建築基準法には規定されておらず、工務店の裁量に任されていますが、木造住宅の耐久性を高めるため、家を長持ちさせるための大事な仕組みです。木というのは常に乾燥しておれば強度も長持ちし、腐ることなく半永久的ですが、一旦湿ってくると強度も落ち、腐り始めて寿命が短くなっていきます。
 外壁通気工法は、構造体の軸組と外壁材の間に通気層という空気が流れる層を作り、その最下部の換気口から空気を取り入れ、軒裏や棟換気から空気を排出する工法で、空気は温度差や気圧差などで流れます。また、それだけでは壁の中の湿気が放出できないため、透湿防水シートという湿気は通すが水は通さない防水シートを軸組みの外壁側に張り付け、軸組み内に滞留した湿気をさきほどの空気層へ放出する仕組みになっています。さらに室内側に気密防湿シートを施工して、構造体内での内部結露を防いでいます。
 このような対策により、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度の「劣化対策等級」で「等級三:構造躯体が三世代(七十五年〜九十年)もつ程度の対策が行われているもの」を得ています。必要な維持管理を怠らなければ、家は百年近く持つというわけです。今後、地球温暖化対策として住宅の寿命を長くする政策が政府からも発表されており、本工法はこのような政策の先取りになるかと思います。

・壁の構造
 家の構造については、風雨や災害から家を守るためにいろいろな工夫が施されています。特に壁については、前の外壁通気工法も含めて内側から、@珪藻土(あるいは和紙クロス、エコクロス)A内装材(石膏ボード)B気密防水シートC断熱材(セルロースファイバ)D耐火材E透湿防水シートE通気層F外装材(石膏ボード)G外壁塗装(リシン厚吹き)と九層にもなっており、家を守るため、住み手を守るためにそれぞれが役割を持っています。家というのは複雑ですがよくできています。普通の維持管理をすれば百年は持つ家というのは、このような構造体を言うのでしょう。

 以上、家の構造等について述べました。次回は、実際に住んでみてのエコな家の効用について記述します。





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