会員寄稿(1)
洛友会会報 226号


庭に来る鳥

内藤 規雄(昭40年卒・北海道支部)

 関西で生れ育った私が、会社の仕事の関係で北海道に来て約20年、この地で仕事を終え、夏はゴルフ、冬は雪かきで自然を楽しんだり、翻弄されながら過ごしております。千歳空港の直ぐ近くの住宅団地でありながら、自然に接することが多く、夜にはキタキツネが庭を通り抜けていることもあります。
 北海道に来た当初、支笏湖まで広がる原生林の中の林道を通り、山菜やキノコを採り、途中、キタキツネを始め、エゾシカ、フクロウなどにも出会い、これまでにない自然を堪能しました。春や秋には、近くのゴルフ場や林道にヒグマの出没も報道されました。一度自然のヒグマの姿を見てみたいものだと思ってはいますが、まだ見たことがありません。かつて北海道育ちの人にそのことを話すと「とんでもない」と一蹴されたものです。どうも生まれてから北海道にいる人は、自然が当たり前なのか、あまり自然に興味を示さないようにみえます。
 数年前、雀が自宅のガス台の上の換気口に巣を作り、気がつけば大量の藁屑を持ち込まれ、危険なため苦労して掻き出しました。近年、旭川方面で冬場に雀の大量死が報道されるように、雀も冬の雪で食べるものもなく命がけのようなので、庭に小さな餌台を作りパン屑を置きました。すると20羽ぐらいの団体でくるようになったので、更に大きめの餌台を作って設置し、市販の鳥の餌も置いてみると、雀以外の野鳥も来るようになりました。特に渡りの時期である、春、秋には色鮮やかな鳥も来て、家族を楽しませてくれます。ちなみに、我が家の排気口から追い出された雀かどうかわかりませんが、斜め向いのご近所の二階の換気口を巣にしたようです。
 これまで、鳥といえば、大量の白鳥やカモ類、鷺やフクロウなどの大型の鳥しか気にしない状態で、車で30分の近くにラムサール条約に登録されたウトナイ湖がありながら、小鳥には無関心でした。庭に小鳥が来るようになって、ウトナイ湖のサンクチュアリに出かけてみて、小鳥の種類によって脂肉が餌になることを知りました。そこで庭の餌台の柱に脂肉を捲いて餌にすると来る小鳥の種類が増えました。シジュウカラ類やアカゲラ、コムクドリなどが突いています。アカゲラはコツコツと音をたててつついていますが脂肉を巻きつけた柱には全く傷つけてはおらず、上手いものです。
 これまでに来た鳥は、スズメを始めとして、シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、コガラ、シメ、カワラヒワ、アトリ、ウソ、ベニヒワ、ベニマシコ、アオジ、ヒレンジャク、アカゲラ、ツグミ、ハクセキレイ、カケス、コムクドリ、ヒヨドリ、キジバト、モズなどです。
 シジュウカラ類は人懐っこく、餌をおねだりするかのごとく、屡々近づいてきたり、激しくさえずります。ヒヨドリは他の鳥が餌台に近づくと追っかけ回してイジメるし、ハトは餌台を占拠してしまうし、カワラヒワは団体で来て、ガツガツ餌を食べてしまい、あっという間に餌が無くなってしまいます。ある種の人間模様の一部を見ているようです。
 特に、鳥に集中しようという気はありませんが、ゴルフをしているとき、これまで気にもしていなかった小鳥が、多くいることに気づき、スコアは少しも良くなりませんが、ゴルフの楽しみ方の幅が少し広がったような気がします。
 一番困るのは、脂肉を根こそぎ持っていくカラスで、今やカラスとの闘いになっています。餌台のまわりに小枝をつけたり、針金を巡らせたり、網を張ったり、また脂肉をタコ糸で縛りつけ、更に魚を焼く金網を加工して囲っても、根こそぎ持っていかれる始末。ひどいときは、柱ごと持っていかれたこともありました。そばの電柱に止まり、馬鹿にしたように電線を突いています。
 神武天皇東征のおり、先導したという八咫烏を神様にしたから、今のカラスはいい気になっているのではと思われてなりません。イソップ物語のキツネとカラスではカラスがキツネの知恵で食べ物をとられますが、ゴルフ場で、禁止されているのにキャディーが出没するキツネに食べ物を与えると、それを見ていたカラスが「ギャー、ギャー」いいながらキツネを襲うのを目撃したことがあります。強盗のようです。


餌台でシジュウカラと雀


庭に来たアカゲラ

 また、北海道のゴルフは雪解けの4月初め頃オープンですが、そのときキャディーの心付けの品物が準備されておらず、売店の人が「大福餅を持って行けば喜ばれる」というので、それを渡したところ、1ホール目のグリーンで、キャディーがカートを離れた直後、カラスに奪われてしまいました。キャディーはカートの奥のほうに入れておいたそうですが、どこで見ていたのでしょうか。
 我が家の近所を徘徊するカラスを追い払うのに鏡で太陽の光の反射を利用し、チラチラさせて嫌がらせをしています。最近は太陽の反射がなくても逃げますが、時折、様子を窺うのか、逆に嫌がらせをするつもりなのか庭の上をわざと低空飛行していきます。そして、まだ我々家族が起きる前の明け方を狙って来ているようです。
 餌台を囲いすぎると、小鳥達が警戒し、また、観察しづらくなります。
 私は電力関係の仕事ではなかったので、仕事上ではカラスとは無関係でした。カラス退治のいい手だてはないものでしょうか。
 今年の北海道は雪が少ないとのことでしたが、千歳は空港が幾度か閉鎖になるほど雪が多く、これも温暖化のせいでしょうか。渡りの鳥達も餌のある雪の少ない方面に行ったようで、我が庭に来るのが例年より少ないようでした。この春、雪の重みのおかげで餌台も少々痛んできました。狭い庭ながら新設、修理などで餌台を3台にし、脂肉は1台だけにして、この秋の渡りの小鳥を待つことにしています。



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